gentleoneの個人的マンガ評価

20年間大量のマンガを読み、蓄えた知識を半自分のために評価していきます。

『鬼滅の刃』レビュー

鬼滅の刃
  • 画力「2点」
  • ストーリー「4点」
  • キャラクター「4点」
  • テンポ「5点」
  • 世界観「3点」
  • 総合「18点」

画力 2点

 上手くはないが読めないレベルではない。

 画風は良くも悪くも昔のジャンプ的で、デフォルメが効いている反面、線が汚いのでごちゃついた印象を受ける。

 動きの表現や構図といった、漫画力と言われるものに関してはかなり劣悪。また、キャラの簡易的な顔があまりに適当で、これらが合わさるとシリアスなシーンがギャグにしか見えないという割と洒落にならない事態が起きている。

 一応、進行するにつれ上達はするのだが・・・最終巻でも並レベルに至ったとはいえない。

一目見て何をやってるのかさっぱり

ストーリー 4点

 普遍的な家族愛や友愛がテーマであるため、とっつきやすいながらも十分に感動できる。随所に散りばめられた師弟愛が非日常のスパイスになってちょうどいいバランスを保っている。

 一方、恋愛描写はほぼ無い。1組だけ恋愛が大きくクローズアップされる(このストーリーは非常に良いので必見。思い出しただけで泣ける)が、基本的には匂わせる程度。女好きキャラの善逸が存在するが、本格的な恋愛描写は存在せず、ギャグや彼の漢気の描写に使われる程度である。

 主要キャラクターは全員がクローズアップされる。地味だが素晴らしいことで、しかもそのストーリーひとつひとつのレベルが高いので、不幸なファンが生まれない。

 詳細はネタバレになるため避けるが、最終決戦は賛否両論。個人的にはとても好きな決戦だったが、爽快感に欠け、後味が悪いという意見も多数存在する。

 特に中弛みせず、最後までしっかり盛り上げる構成であり、巻数も過不足無いので一気に読める。完結済みなので一気読みしちゃおう。

 後日談が存在するが、こちらは「否」多めの賛否両論。個人的にはやりたかったことは分かるが・・・といった感じ。若干読了感を損ねた他、これにより救われないことが発覚したキャラクターが存在する。

 また、一部のキャラクターは本編終了後に辛い現実が待ち受けていることが確定している。ハッピーエンドしか読めない人は注意すべき。

 ストーリーとはちょっと違うかもしれないが、ワードセンスが非常に独特かつクセになる。つい口に出したくなる言葉が多く、ネットでは度々ネタにされている。元号ネタなどは特に有名。

キャラクター「4点」

 主人公の炭治郎は「最も優しい主人公」と言われるほど優しく、素直で実直な少年。仲間の面倒を見て、悪人や敵であっても情けを忘れず、絶対に人を見捨てることもない。きちんと実力もあるため、とても好感度の高い主人公である。

 ヒロイン(と言うのか?恋愛対象ではないのだが・・・)の禰󠄀豆子はいわゆる「戦うヒロイン」で、それでありながら敵種族である「鬼」であり、主人公の妹であり、喋れなかったり・・・うーん、こう見ると盛り盛りだな。

 とても可愛らしいヒロインに仕上がっており、基本的に(自我が怪しいので)素直な少女なのでヘイトを買うことはそう無いだろう。戦闘スタイルは蹴り主体。着物から覗く脚が眩しい。そして竹を咥えてよだれ。吾峠先生は女性だそうだが、凄まじいフェチズムを感じる。

 キリがないので好きなキャラクターを解説することにする。私のお気に入りは伊之助である。猪の顔の毛皮を被り、上半身裸の少年で、毛皮を脱いだ素顔は中性的な美少年。気性は荒く、頭も良くない。

 初登場時に禰󠄀豆子を刺すというイカれた登場をし、多くの読者から「お前あの時のこと許してないからな」と言われ続けたキャラではあるのだが、その本性は野生児のためものを知らず、情緒の育っていない幼児のようなキャラ。彼が人の温かみに触れ、初めは名前もろくに覚えていなかった炭治郎のために泣くシーンは屈指の名シーン。

 満点でないのは、キャラの個性付けが無理矢理気味。炭治郎はとても鼻がきき、異常なほどに頭蓋骨が硬いのだが、これに一切の説明が無い。「ただ人並はずれた少年」である。じゃあいっそもっと個性を持たせてはどうなのか・・・

 その他にも五感を基礎にした能力が出てくる。説明があるものもあるが、基本的には説明は無い。読んでいて違和感があるので減点対象。

テンポ「5点」

 テンポは非常に良好。本作の一番の評価点。全23巻とそこそこ長いのだが、ひと息に読み切れるほど。

 笑えるというよりは和む感じのギャグが随所に挟まれ、重苦しいテーマを緩和し、読み口を軽くしている。

 ひとつひとつのエピソードも長くないので、テンポ良くストーリーが進んでくれる。無駄に長い話というのも特にないので、面白い話を面白いままに終わらせてくれるのは貴重。

世界観「3点」

 良く言えば王道、悪く言えば定番。良くも悪くもジャンプ。

 妹を救うために魔王を救う話、というよくあるストーリーなのでどういうスパイスを効かせるかが重要なのだが、鬼殺隊(主人公が在籍する、鬼を殺すための組織)内部の話があまり掘り下げられない。

 一応練り込んでありそうではあるし、大正時代を舞台とするのは何気に珍しい。もう少し掘り下げられなかったのだろうか。

総合「18点」B +

 今や誰もが知る国民的アニメ鬼滅の刃だが、その秘訣は「テンポの良さ」と「変にひねらない王道展開」の二つの要因である。

 漫画としてはとても画力があるとは言えないものの、話は面白い。そういう漫画なので、アニメの圧倒的な作画により弱点がカバーされ、良質な作品になっているので、アニメの大ヒットはコロナ需要とも併せて納得できる。

 原作にしても読んで後悔するような作品ではないため、話題のためにも一読する価値はあるだろう。